水を飲むのが好きだ。
年々、一日あたりに水を飲む量が増えている。
フランソワーズ マレ=ジョリスの「ダイエット」が好きだ。眠い目をこすりつつ明け方近くまで読んで、今日は思いッきり遅刻した。だが、水と「ダイエット」は止められない。
遅刻したのに性懲りもなく、上司が見ていない隙を突いて水を飲み、「ダイエット」のページをめくる。
きのこの山とタケノコの里も好きだ。どちらかというとタケノコの里の方が若干、好き度は上だ。
今日は家に帰ったら、思う存分、タケノコの里を食べ、「ダイエット」を読みながら、水をガブ飲みしてやろうと思う。
はやく仕事終わらないかな~~・・・。
爽快感は得られなかったが。
サクセスストーリーが好きだ。努力と幸運によって、勝利をつかむ瞬間の爽快さ。胸のすく思いと明日への希望を感じさせてくれる。一般には立身出世物語が典型的なサクセスストーリーとされるが、女性のやせたい願望が80%以上を占める現代日本社会において、ダイエットの成功もある種のサクセスストーリーと言えるかと思う。
本書はダイエット成功による爽快感や共感を期待して手にとった一冊だったが、ぜんっぜん爽快感が得られなかった。けどちっとも腹が立たなかった。
主人公にとって、太っていることは、アイデンティティであった。同時に免罪符であり、本人がいくら否定しようとも多少の劣等感も伴っていたと思う。ダイエットにより、それらを捨て、新しいサイズとともに新しい生き方を決心するま!でを描いた本書だが、いやもう、そこに至るまでの苦悩は「爽快感」とは正反対、「なんでダイエット一つでこんなアホみたいに悩んどるわけ??」と思われても仕方が無いくらいごちゃごちゃと悩み、理屈付けをしている。ここらはダイエットの必要性が無いのにあと3kg痩せたいと単純に願う、肥満度0%以下のねえちゃんの多くには理解しがたいことであろう。しかし、この心理描写があればこそ、巷に溢れるシンデレラストーリー的(ダイエットに成功→自分に自信→仕事も恋愛もうまくいく)ダイエット物語とは趣を異にする読みごたえのある小説に仕上がっているのだ。
作品はいうまでもなく、翻訳者の文章力とセンスに脱帽!
ダイエット、という題名から息苦しくなるような作品か、またははじけ飛んでしまった類のポップな作品をイメージした。しかしこの作品はそんなイメージを見事に裏切ってくれた。
作品はジャンヌという美食家で個性的(!)な女性を中心に描かれている。彼女はダイエットすることにより、(自ら)と(周囲の人々の自分に対する意識)に気付く。悪意と羨望、そして変らぬ友情。物語に影を落す秘密の『エピソード』と亡き祖母のイメージ。
文章は流麗かつ繊細。時に映像になって脳に届く美しさ!人間に対する観察力もすばらしく、読んでいて何度も“あぁ、こういう人いる!”とか“誰々に似ているかも・・・。”と思った。
また、ジャンヌの祖母が作る料理の数々には食指がうなり、ジャンヌが愛する食の世界に美を見出す。非常に繊細でありながら、そのことを(意識的に?)感じないように、そして周りからも感じられないように振舞う主人公ジャンヌの生き方に時に哀れささへ感じながら、他人事とは思えずついつい読み耽った。『痩せていること』、『美しくあること』、『普通であること』、『皆と同じ価値観であること』が個人にもたらす恩恵とは・・・?
逆に『太っていること』、『自分の価値観に従って生きること』、『強い信念をもつこと』、そして『孤独であること』がもたらす事とは・・・?
深く考えさせられる作品だった。
同時に、この繊細かつ流麗な作品のイメージを邦訳で見事に表現している翻訳家の力量には感心しました。ジョリスのほかの作品も是非同じ翻訳家の手で邦訳して出版して欲しいです!

